碧雛蜜柑

登ったり攀ったり遡ったり走ったり滑ったり食ったり

作った山のカレンダーで2020年を振り返る

2021年も1/3が終わったこのタイミングかよって感じなんですけど、2020年の山を振り返ります。

去年のはこちら

 

kotatsumuri39.hatenablog.com

 

1月

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撮影日:2020/1/19

フォロワーさんたちと乗鞍岳へ1泊2日のテント泊。
松本駅に集合してゲレンデへ向かうため、前日に鈍行で甲府駅まで行き駅寝。
甲府駅南アルプス行く人が多いからみんな駅寝している」と噂に聞いていたが、それはバスが運行している夏の話であって冬は自分以外誰もいなかった。
甲府駅から始発で松本前駅まで行き、合流して車でゲレンデまで。そしてリフトを1本だけ乗ってコース外へ。
初日は曇っていたしツアーコースをただ歩くだけだったので会話をメインにしながら歩く。位ヶ原でテントを張り、夜はシチュー。
そもそもこの山行の発足は「シチューが食べたい」という話からだった。
暖冬でかなり暖かく、冬用シュラフにダウン着たまま寝たら汗をかいた。
翌日、日の出とともに起きる。レトルトで簡易的に朝食を済まし山頂へ向かう。
前日は打って変わって快晴で、風は山頂付近だけ強かった。
山頂からは御嶽山を見ることが出来て感無量。
たくさんのシュカブラとエビのしっぽも見ることが出来た。

写真は乗鞍岳山頂へ向かう最中のもの。(夏道ではない)

 

2月

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撮影日:2020/2/22

山か、と言われると非常に困る。
セツブンソウは早春に咲く花で、春の訪れ告げる“妖精” とも呼ばれている。
どこにでも咲いているわけでもないが、見ようと思えば群生地は割とあちこちある。
「困る」と言ったのはその見に行った場所で、野山というよりは群生地として保護されている場所のものだからだ。
高山植物とは違うにせよ野山の花ということでカレンダーに設定した。
見に行ったのは小鹿野町にある節分草園。300円程度払うことになる。
小鹿野町というとピンと来ない人がいるかもしれないが、両神山の麓と言えばどうだろうか。
今年は白馬に住み込みをしていたため見に行けなかったが、白い花弁に雄しべ雌しべが織り成す黄色と紫が可憐な花なので是非ともまた見に行きたい。

 

3月

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撮影日:2020/3/21

この冬シーズン一番のチャレンジだったように思う。
本来は3連休に合わせて甲斐駒ヶ岳仙丈ヶ岳を登ろうという予定だった。(今思うとなかなか無謀な計画だった)
が、初日の天気が悪そうだったため転進し、中日と最終日で1泊2日の黒戸尾根ルートで甲斐駒ヶ岳へ行くことに。
テント泊装備がずっしりとのしかかる黒戸尾根はかなりキツく、七丈小屋のテン場に着いた時点で割と疲弊していた。
時刻も午後を回っていたがテントを張りひとまず山頂を目指すことに。
晴天で気温も高いため雪は腐っていてアイゼンの爪を信じられない。
夕方になれば冷えてきて雪も凍るかもしれない。が、そんなに時間をかけて登頂したときに怖いのは帰り。今の体力と残りの時間と距離を考える。
気づけば「どのタイミングで撤退するか」ばかり考えていた。
いよいよの急登になったときに話を切り出した。

「撤退しますか」

その提案はすんなりと受け入れられた。
登りでも怖さを感じるということは、下りは当然もっと怖い。斜面に正対してピッケルとアイゼンを使って慎重に下りていく。ピッケルが2本欲しいと思った。
一息出来るところまで戻ってきたとき、その頂を仰いだ。
どうやら2本剣の岩場の真下近くで撤退したようだった。晴天の山頂がやけに遠く感じる。
いつかまた来よう、そう2人で話しながらテン場へ戻り食事を取った。

翌朝、登頂は諦めてもう下山のみとしていたため日が昇ってからの起床となった。
ちょうど早朝に山頂へ行ってきたおじさんが一人下りてきたので会話した。

「あんたたち山頂は行かんかったのか?」

「昨日行こうとしたんですけど雪が悪くて撤退しまして。今日はもう下山だけです」

「早朝は雪が締まっていて全然行けたよ」

雪の知識が足りないなあと思わされた。
事実、このとき七丈小屋管理人である花谷さんもTwitterで昼近くからの登頂は避けるように言及していて、自分たちが登ったあたりの日にちに救助ヘリが出動する事案もあった。
しばらく山頂まで無事行けた山行ばかりだったので、後ろ髪を引かれる思いは正直あった。
が、「職業登山家でない自分たちに今日踏まないといけない山頂はない」。今は遠くの地へ越してしまった山の先輩であり友人である人から教えてもらった中で一番記憶にある言葉。まさしく今回はその通りだなと思った。あの判断で良かったのだ。
実力不足を痛感しながらテントを撤収し下山した。

天仰ぐ甲斐駒ヶ岳。改めて振り返れば甲斐駒ヶ岳が天を仰いでいるのはなかった。その頂はまだ遠く、天を仰ぐかのように自分がただ仰ぎ見るしか出来なかっただけだ。

 

4月

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撮影日:2020/4/17

コロナ禍と呼ばれるコロナウイルスによる各種の自粛運動が非常に強まっている最中だった。
山の麓の町の来訪自粛依頼、不要不急の外出自粛要請、登山団体による登山自粛要請等々。
健康維持のための散歩は認められていたため、巾着田まで散歩することにした。
秋には曼殊沙華で有名な巾着田だが、春は菜の花畑となる。
そこからクライミングでも登山でもお世話になったことのある日和田山が望めた。
普段なかなか山容を気にしない山だっため、改めて麓から見るというのは新鮮だった。

 

5月

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撮影日:2020/5/11

相変わらず登山は自粛中だったため、せめて山を見ようと近くの公園に。
何度も登っている奥武蔵の山々が見えた。ただどれがどの山かまではさすがに分からない。
写真では上手く撮れなかったがその山脈の輪郭を眺めていると意外と迫力があることに気づかされた。

 

6月

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撮影日:2020/6/20

「マスクをして登山しましょう」なんてよく分からない説明をどこかで見かけるようになった。
また別の説明では「脱水症状、熱中症になるから無理につけなくてもいい」というのも見た。
あちこちでいろんな意見が出ており、県外移動や来訪についてもまちまちだ。
ひとまず県外移動は避け、地元の山である棒ノ嶺へと出かけた。
沢登りではないけど水量少ないゴルジュの中を進めるルートがあり、一般登山道としてはかなり珍しいように思う。
残念ながら沢を遡るルートは冒頭のほんの数十分間程度だが、清涼感があり奥武蔵の山でもとても好きなルートだったりする。
山頂の一本桜も見事で、4月下旬には満開となり見晴らしのよさも相まって多くの人が集まる。残念ながら満開の時期にまだ行けたことはない。
6月下旬というのもあって暑かったが沢に沿っている間はやはり気持ちがいい。緑も綺麗な時期でその鮮やかさに何度も目を奪われた。
次こそは満開の桜を拝みたい。

 

7月

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撮影日:2020/7/19

7月からは嬬恋村でキャベツの収獲バイトをしていた。
朝3時には畑へ行き延々とキャベツを切り、昼に仕事が終わる日々。
晴れでも雨でも収穫は行われ、今までのデスクワークがいかに体に楽だったかを思い知った。
この7月は雨続きでほとんど晴れの日がなく、そのせいで収穫以外の畑仕事が捗っていなかった。
そのため晴れてると昼メシのあとにそのまま夕方まで他の畑仕事をすることもあった。
この日は晴れていたが午後の作業はなしだったため、昼から行ける村上山へ。
嬬恋村草津白根山四阿山浅間山と言った百名山の他にも多くの山に囲まれていて選ばなければ山へのアクセスが非常にいい。
村上山は休暇村鹿沢の裏から行ける里山で、里山と言っても標高は1700mを越える。
そもそもの標高が1000mを越える嬬恋村ならではだろう。
片道1時間程度で山頂まで行け、山頂からは嬬恋村の方面の展望が良い。
四阿山や田代湖が見え、少し首を伸ばせば浅間山も見える。
この日は自分以外に山頂で無線に勤しむおじさんが一人。
交信の傍らで他愛もない話をして先に下山した。

 

8月

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撮影日:2020/8/13

キャベツバイトにもお盆休みはある。(2日だけだけど)
最初は白山へ1泊2日しようと思っていたけど天気が悪くて転進し、月山へ。
なだらかな山でルートもしっかり整備されていてとても登りやすく、山頂からの景色は素晴らしかった。
月山は花の百名山にも挙げられていて、多くの高山植物たちを見つけることが出来る。
その中でも群生していて人目を引いたのがミヤマリンドウだった。
高山植物図鑑で初めて見た時から気に入っている花で、花弁の間に少し小さくギザギザした副冠が凛々しくて良い。また花弁は雄しべの近くに斑点模様があるのも特徴。
ミヤマリンドウが多く咲いているのを初めて見たので少しびっくりしたくらいだった。
バックカントリーでも有名なのでいずれ滑りに行けたらと思う。

 

9月

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撮影日:2020/9/28

週休2日とは言え金、月休みで飛んでいるためなかなか泊まりの山は出来ない。
そこで考えたのが、仕事が終わった昼からテン場へ行きテントを張って翌日がっつり回るプランだった。
白羽の矢が立ったのは奥穂高岳。ジャンダルム縦走でもしないとなかなか泊まりで奥穂高岳へ行くことはないだろうと思い、前日入山の実質日帰りを考えた。
前日の仕事終わりに軽バンを納車した足で上高地へ行き、木梨平でテント泊。
翌日の3時ごろから岳沢ルートで登り始め前穂高岳へ。道中雷鳥に会うことができ、その愛らしい姿に和んだ。その後、奥穂高岳の山頂を踏んだ。
ジャンダルム、笠ヶ岳槍ヶ岳常念岳裏銀座の山々などを一望できた。
穂高岳山荘へと下り、ザイテングラートを経て涸沢へ。
次第に紅葉が近づいてくる様は気持ちよかったが、ザイテングラートは巨大な岩場の尾根と言った感じで、ボウル地形に背骨のようにぽんと生えているのが不思議だった。
意外にも疲弊していたため涸沢ヒュッテでおでんとカレーを食べて大休憩。
その後横尾まで下り、目指しているバスの時間がギリギリだったため走ったり歩いたりを繰り返しながら小梨平まで。
なんで出発時にテントを片づけておかなかったんだと過去の自分に悪態をつきながら雑にザックに詰め込み撤収した。
12時間以上行動してかなり疲れていたけど翌日は畑仕事。

『山に登る』『翌3時には畑にいる』”両方”やらなくなっちゃあならないのが『キャベツバイト』の辛いところだな……覚悟はいいか?俺は出来てる……

 

10月

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撮影日:2020/10/30

10月は剱岳にも登っていたのでかなり迷ったが、それでも浅間山を選んだのには理由がある。
7月から働いていたキャベツ畑でのバイトも10月末に無事終わったのだ。
毎日畑から眺めていた浅間山四阿山も同様ではあるが、自分たちが働いていた畑は浅間山側にあった。
守り神のように座していたその山に、10月の末2日連続で登った。
外輪山から自分たちが働いていた畑が見えると農家の迅さんから教えてもらう。
本当に見守られていたのかと錯覚する。浅間山はただそこにあるだけに過ぎないが、信仰のような親近感を覚えた。
写真はトーミの頭から撮ったもので、登山口から1時間程度もあればこの景色を見ることが出来る。
そこから数十分かからないほどで黒斑山という外輪山の一部に登ることができ、噴火の警戒レベルが上がっていて前掛山まで登れないときはここまでという人も多いらしい。
オススメとしてはそのまま外輪山を進み蛇骨岳などを通りJバンドを下ってぜひとも荒涼とした草原を歩いてもらいたい。

 

11月

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撮影日:2020/11/12

嬬恋村から戻ってきて1週間くらいしてからお世話になっていた農家の迅さんと九州へと出かけた。
迅さんはオフシーズンだったし、自分はしばらくニートなので気兼ねのない旅。
九州にいる間は天気にも恵まれ、毎日山に登ることが出来た。
初日は開聞岳へ。夕暮れを待って麓に巨大な影を落とす開聞岳は非常によかった。
2日目は韓国岳へ。ようやく見ることのできた念願の新燃岳はかっこよかった。
そして3日目。阿蘇山から日の出を見ようと深夜から仙酔峡ルートを選択。
時季外れのミヤマキリシマも咲いていた。
ちょうど稜線に上がったときに日の出の瞬間を見ることができ、祖母山のほうから上がってくる太陽は美しかった。
その後高岳と中岳へ行き、火口を見て下山。視界に収まりきらないほどの広大な火口には圧倒された。
下山後はその足で九重連山の登山口へ向かい、坊ガツルにテントを張り法華院温泉に入りテントで宴会。
最終日に久住山や中岳を登り下山した。

 

12月

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撮影日:2020/12/13

12月前半は林業研修の関係で八戸にいた。
友人と休みの日に八甲田山へ登ろうと話していて、最初の休みの日は天気がよかったが雪がそんなにかもと思い観光へと切り替えた。
翌週、いよいよ登山という日。しんしんという表現では済まないほど雪は降り積もっていた。
先週行ってれば……なんて思いながらたいした視界もない山を歩く。11月後半は山へ行かずクライミングが多かったせいか体力があまりなく意外としんどい。
標高が上がるにつれて風がどんどん強くなってきた。
山頂まではどう頑張っても無理なため、避難小屋で昼ご飯を食べて帰ることとなった。
避難小屋では意外にも多くの人が来ていて、ガスストーブが焚かれていた。圧倒的人権……。
一気にまた寒い風雪の中かあと思いながらも小屋を出る。小屋周辺はスノーモンスターで溢れており、天気も相まってか本当にこれが動いたらと想像するとぞっとする。不気味に沈黙を守っているそれは、何かの拍子にふと1つだけ見えたら確かに物の怪の類かと思ってしまうかもしれない。
友人はスノーシューで先行していて、ワカンの自分とはスピードが違う。
そろそろ一回声をかけようかなと思ったとき、ワカンで雪を踏み抜いてしまった。しかも枝に引っかかる。綺麗に枝と枝の間に足が引っかかってしまったようで全く抜けない。体勢が悪くなかなか力を込めたり角度を変えることも難しい。
その間にも友人との距離は離れる一方で、もう声をあげてもこの吹雪では届くこともなかった。笛を鳴らしてみる。同じく無理そうだ。
どこかのタイミングで気づいていれば待ってくれるか戻ってくるだろうと思いひとまず脱出に専念する。
なんとか体を丸めてワカンのヒモをほどく。こういうとき体が硬いと大変だなと身に沁みながら先へ進む。
少しすると無事友人と合流することが出来た。ちょっとしたヒヤリハットだったと二人して笑う。
吹雪に曝されたあとに食べる温かい蕎麦はまた格別のものだった。

 

 

という感じで2020年でした。