Hysteric Blueの「カクテル」がいくつになっても刺さる
タイトルのことについて語る前に、どうしてもこれについては下準備がいります。
みなさん「スパイラル~推理の絆~」ってご存じでしょうか。
Wikipediaによると
『スパイラル 〜推理の絆〜』(スパイラル すいりのきずな)は、原作:城平京、作画:水野英多の漫画。またこれを原作とする小説、アニメおよびドラマCD作品である。漫画は「月刊少年ガンガン」で平成11年9月号(1999年8月)から平成17年11月号(2005年10月)まで連載された。累計発行部数は510万部。
連載当初は推理漫画であったが、後半になると「『ブレード・チルドレン』と呼ばれる常人より優れた体力、知力を持った少年少女たちとの戦い」、および「天才と呼ばれる歩の兄、鳴海清隆と歩の兄弟の心理的葛藤」がメインテーマとなっている。各話のサブタイトルは往年のSF小説などをもじったものが多い。アニメ版のオリジナルエピソードも同様である。
とのことです。ちなみにぼくは今しがたKindleで全巻買いました。
Wikipediaにもあった通り、前半の本格的な推理と後半の超人的な体力・知力を持つ「ブレードチルドレン」と呼ばれる少年少女たちとの戦いや天才多才イケメン主人公の完璧超人兄への葛藤など、見所満載でいろいろ考えさせられる作品。
「子供の頃に読んで記憶に残ってる作品」っていろいろあるじゃないですか。そこに間違いなく入ってくる一作。
しかしぼくが最初に出会ったのは漫画ではない。2002年から放送していたテレビアニメです。
この作品何がすごいって、センスなんですよ。
イケメン美少女がたくさん出てきて推理もの始まるんですけど、何よりまあ全体的に展開が暗い。そもそも推理ものだから殺人はつきものだしね。
主人公含め出てくるイケメンたちが全体的に陰があるの。チャラチャラしてない。なんというかそれが耽美に見える。
まず主人公、鳴海歩(なるみあゆむ)。当時流行った中性的なクールイケメンで、勉強・運動も出来て人並みずば抜けた洞察力・観察力・推理力で事件を解決していく。しかもピアノがめっちゃ上手い。
だけど兄の清隆(きよたか)が全てにおいて上回っているせいでコンプレックスになってて閉塞的。
今は美人警部補のお義姉さん・まどかと二人暮らし。まどかは兄・清隆の奥さんで、歩の初恋の相手。
……ね?なんかもう翳りがすごいでしょ?初恋の相手が兄の奥さんて。しかも今は二人暮らして。
「ん?二人暮らし?じゃあその完璧超人・清隆はどこに?」という話なんですが、なんと現在行方不明。
そう、鳴海清隆はノンキャリアながらに20代にして警部まで昇格した超絶エリートなんですが、ある日を境に突然行方をくらまします。
そしてある日歩が通っている学校で起こった事件をきっかけにブレードチルドレンと呼ばれる超人的な体力や知力を持つ少年少女と歩は出会い、そこから兄・清隆にまつわる様々なことを知っていくというお話。
ちなみにこの清隆さん、ピアノがめっちゃ上手い歩よりもさらに上手く、昔は天才ピアニストと名を馳せていたんですけど、ある日「こんな演奏じゃ人を感動させることは出来ない」と自分の限界を知りドイツの公演後に鍵盤の蓋で自分の指を叩き折ります。
……香ばしくなってきましたねえ。
作品全体的にこんな感じで暗くて、だけどどこかそれが儚くて綺麗な雰囲気が漂っています。しかし暗くなりすぎないように明るいヒロインや、萌え萌え爆弾ロリータなどのキャラもいてバランスが良い。
そしてアニメは何よりOPとEDのセンスがいいです。
OPは明るい曲調で全く動かないながらも演出にセンスを感じます。
そしてED。もうね、これが天才的すぎる。
フルはこちら。
アニメ放送当時、まだ小学3,4年生くらいですよ自分。
オサレアニメだと思ってスパイラルを観ていて、EDを聞いたときのあの鳥肌。
歌詞自体は大人の女性の失恋ソングというかその後の感傷的なような諦めのような、そういう鬱々としたことを思い出と一緒に歌っているものなんですけど、最後。最後の部分。
一日をこんなに長く感じるのに
一年がこんなに早く過ぎてしまう一年をこんなに早く感じるのに
一生をどんなにうまく生きれるでしょう
なぜか、ここだけ刺さったんです。当時小学生で、部活して家帰ったら愛犬とばあちゃんがいて、漫画読んでたら両親が仕事から帰ってきていい匂いがして家族みんなで晩御飯食べてって毎日楽しくて大したことに疑問なく将来もあまり考えず生きていた自分にも。この部分はとても刺さったんです。
それ以外の歌詞は正直「大人の恋愛ってすごいな」なんて程度で、特にたいした意味も分からなかったしそこに自分を重ねることなんてなかった。
だけど高校生、大学生、社会人となっていくにつれて、失恋したり結ばれたり、いろんなことを経験していってだんだんと自分に刺さる歌詞の箇所が増えていったんですよね。以下歌詞抜粋。(ほとんどだけど)
三年目のオフィスはとっくに慣れきって
代わりにあたしは何かを失くしたの
結婚を罰ゲームみたいに言う大人達
そんなんじゃ夢さえ見れない子供だし
あたしが好きになったくらいの人だから
あなたが選んだ彼女はきっとステキ
ちょっとギコチなかった恋の相談も
今ではちゃんとできる歳になった
みんな幸せだといいな願うほど
旦那とふたり撮ったハガキ増えてくる
五年前心の底から欲しかった
あなたの子供に私の面影はない
恋だって夢だってたくさんあるのに
今日だってあとひと押しができてれば
仮定のような言い訳が無駄に増えた
辛いこと悲しいことを逃げたくて
甘いカクテルに溺れた夜は要らない
辛いこと悲しいことに向き合った
長い格闘に私はまた逃げる
天才かよ……(天を仰ぎ見る
もう説明のしようがないほど歌詞に表れている。
今これ読んだ人は結構そのまま「分かる」ってなったりすると思うんですけど、自分はこれが段々、段々といろんなことを経験していく度に聞き返して「ここ分かる……」ってなっていったんですよね。もうこれは人生。人生をかけたスルメ曲*1だよ……。
ちなみにスパイラルの主人公・歩ですが、いろいろあって実は二十歳までしか生きられない体です。
大人になることが出来ない少年が主人公の作品に、大人の女性の恋愛模様を綴ったED……そのセンスよ。
そしてだからこそ染みる
一年をこんなに早く感じるのに
一生をどんなにうまく生きれるでしょう
という歌詞。このセンスほんと何……?
ぼくのブログ前から読んでる人は分かってると思いますけど、失恋のほうが圧倒的に多いんですよ、はい。*2
だからこそ響く
あたしが好きになったくらいの人だから
あなたが選んだ彼女はきっとステキ
や
みんな幸せだといいな願うほど
旦那とふたり撮ったハガキ増えてくる
五年前心の底から欲しかった
あなたの子供に私の面影はない
という歌詞。自分が好きになった人が友人と付き合ったとか、元カノが別の人と結婚して子供産んだとか、結構身に覚えがある。
もうぼくは『三年目のオフィス』どころか社会人6年目ですけど、逆に言えば「オフィスも全く知らなかった小学生」から「六年目のオフィス」になるまでずっと聞いてる曲ってことなんですよね。
今この曲を聴いて、歌詞を見て、「あぁ~、分かる分かる」ってならなった人。
その中でも特に自分がまだ経験が若いからこそならなかった人(読者に学生がいるのか謎だけど)、これからもっといろいろ経験していく中で、たまにはこの『カクテル』を聴いてみてください。
そのうち「ああぁぁあ染みるぅぅう……」ってなるんで。そのときは一緒に甘いカクテルに溺れましょう。
あー、在宅勤務で一日をこんなに長く感じるのに……