初の雪山テント泊で寒くて眠れなかった話
今回は過去の記事で「いずれ”寒くて眠れない”についても書きたいと思う」と書いた通り、そのときのお話。
↓過去の記事
結論から言うと自分の装備不足のせいなんだけど、「これから雪山でテント泊始めてみるぞ~」っていう人の参考になったらうれしいなと思う。
ただ寒さは個人差があるので、あくまでも自分はこの装備では防寒が足りなかったということを念頭に置いてほしい。
2019年3月中旬。アイスクライミングを教えてもらうため3人で八ヶ岳の赤岳鉱泉に1泊した。
標高2250m、木々に覆われる八ヶ岳ふもとにある山小屋
八ヶ岳は標高や緯度の割に冷え込むと聞いていたが気温は朝から暖かく感じ、同行者の一人は「これなら明け方でも-15度いかないくらいですよ」と言っていた。
年明けの雪キャンプで-10度を体験したが快適に寝れたので、正直楽勝ムードが漂っていた。5度って結構違うんだけどね
ちなみにキャンプ時に使ったシュラフは冬用のリミット-12度まで使えるもの。
今回持ってきたのはNANGA UDDBAG380DX。リミット-2度まで
まったく冬用ではなく、3シーズンシュラフだ。
このままではさすがに寒いのはわかっているので、これに保温性をプラスするため、エスケーププロヴィヴィをシュラフカバーとして使用した。
レビューでは「体感5度くらいプラスで耐えられるようになります」みたいなことが書いてあった気がするのでこれを信じた。まあ、-2度に5度引いても-7度なんだけどね
今考えると全然足りない。なんでこれでいけると思ったんだ、あほかこいつ。いや、自分だけど。
ちなみにほかの装備を紹介すると、
- 3シーズンエアマット(頭から足まであるやつ)
- Zライトソル(クローズドセルマット)
- ダウンのテントシューズ
- メリノウールソックス
- 化繊おパンツ
- 裏起毛タイツ(下)
- 化繊7分パンツ
- ハードシェル(下)
- ミレーのあみあみ(半袖)
- ジオラインLW
- ナノエアフーディ(化繊保温・行動着)
- ユニクロのULダウンジャケット
- ハードシェル(上)
- ウール手袋
という感じ。1つ1つは薄いものが多いので、重ねまくる戦法だった。
テントは特段冬用というわけではなかったと思うが、ダブルウォールの3人用に男2人で寝た。
一応テント内には薄い銀マットを引き、軽い保温兼クッション材とした。
小屋で美味しい晩御飯を食べてワインも飲んでほろ酔いになり、もう一人に「あとでそっちのテントに遊び行くから」と言われ、了承してテントに入った自分はすぐさま就寝体勢を取った。
いや、お酒弱いんですよ。ましてや山の上。初めてのアイスクライミング後でくたくた。そりゃ眠いよ。眠いとどうなる? 寝ちゃう、おやすみ。
同行者後日談「夜の9時くらいに遊び行ったらもうコタおたち寝てるから起こすのも悪いと思って自分のテント戻ったよ」
申し訳ねえ……
そして草木も眠り凍てつく深夜1時。そのときは訪れた。
……??
…………!?!?!?!?
くっそ寒い
経験したことのない寒さだった。
まず、足先と手先が異様に寒い。感覚はある。あるだけマシなのかもしれない。
寒いというか、痛い。
シュラフの中で手をこすり合わせ、ふとももで手を挟んだ。
足先はどうしようもないので足を軽く動かすくらいだった。
しかし寒い。1分が何十分にも感じる。え、ていうか今1時?普通寒くて起きるのって3時とかだろ。なんだ1時って。日の出まであと5時間くらいあるの?マジで?
とりあえず寒い痛い時間が長いと思いながら耐えているとうとうとし始め、悪夢のような半分覚醒していて常に寒さを感じているような状態になった。
ハッ
また寒さではっきりと目が覚めた。今何時だ?もうそろそろ4時でしょ。え、2時?嘘やん、さっき1時過ぎだったやん。1時間も寝てないの?ていうか足の指の感覚ないけど凍傷してない?大丈夫??……あっ、動くね?大丈夫大丈夫。いやでも全然寒くて大丈夫じゃないよ?
そもそも、”手足が特に冷える”だけでまんべんなく寒い。
また手足をこすっているうちに閃いた。「もういっそ外出てみよう」
そういうわけでもぞもぞとシュラフから出た。完全に冷え切っているせいか、シュラフから出ても寒さはあまり変わらなかった。
冬靴履くのはめんどうくさかったため、テントシューズのままテントを出ようとする。
隣の同行者をちらと見るが、穏やかな寝息を立てていた。どうやら普通に生きているし、快眠のようだ。というか死にそうになっているのは自分だけだ。
テントの外に出てみる。そよ風が頬を撫でるが、改めて特別な寒さは感じなかった。もはやそれどころではない。
ひとまず上を見上げると満点の星空だった。冬の八ヶ岳。赤岳鉱泉の明かりしかない。それはそれはとても綺麗だった。だけどカメラを取り出す心の余裕は全くない。
とりあえずトイレに逃げ込んだ。温便座なのでテントよりも遥かに暖かい。もうここで寝ればよくない?
少し暖かさを取り戻し、電気の明るさに安心したためか急にもよおしてきたので、ついでに用を済ませた。
外に出て体力を使ったのか少し眠くなってきたし、次こそ寝れるかなとポジティブに考えながらテントまで戻り、横になった。
ウォウッ
足が痛い。手はうまく太ももに挟んだまま寝れたおかげか、まだダメージは少なかった。ちなみに何度も寝がえりを打っていることは覚えているし、なんだかずっと寒いことも記憶にある。半覚醒状態なんだろう。
それにしてもいい加減5時くらいでしょ。もうそろそろ起きだしてガソゴソしてたら同行者も起き始める感じなのでは?どれどれ何時かnウワァァァァァ3時だァァァ
フリーザの戦闘力53万よりも、ハオの100万越えの巫力よりも、プリズムライブでオーケストラ相手に指揮を振るジュネ様よりも絶望した。
絶望先生が「絶望したーー!」とよく言っていたが、教えてやろうか?本当の絶望ってやつを
とりあえず足先をどうにかしないといけないと思い、スタッフバッグを2つ取り出してそれぞれソックスの上に被せ、そこから改めてテントシューズを履いた。
素足、ソックス、スタッフバッグ、テントシューズの順番になる。
よしよし、これで足先も大丈夫だろ……。
めっっっっっっっっちゃ足痛い
どうやらスタッフバッグが汗を通さないせいで足が蒸れ、それが冷えて戻ってきたらしい。もう打つ手ないじゃん
とりあえずスタッフバッグを外し、足を小刻みに動かす。
ここでようやくホッカイロを持ってきたことを思い出し、ザックから取り出して足先に貼る。いや、ホント今まで何してたの。
しかし貼れども全然暖かくなる気配はない。結局、足を小刻みに動かすしかなかった。
ここから1時間以上は全く寝ることが出来ず、寒さを常に感じているため何か思い出したりして時間をつぶすという余裕もなくただただ耐えていた。
そうこうしてホッカイロがようやく効いてきた頃に半覚醒のまどろんだ状態のまま眠りについた。
6時に同行者が起きたため、すぐさま火をつけてもらい湯を沸かし朝飯にした。
同行者に全然寝れなかった話をしたら「そこまで寒かったら自分に気にせずバーナーつかって良かったのに……」と言われた。それもそうだ。
こうして無事、朝を迎えた。そう、俺は生き残ったのだ……。
今回得た教訓
- スタッフバッグで保温はやめたほうがいい
- ホッカイロは早めに貼ろう
- 雪山テント泊慣れてもないのに外の気温より著しく高いリミット温度のシュラフを使わない
- ナルゲン湯たんぽとか、バーナーで火起こすとか、あるじゃん?
みなさん雪山登山はご安全に。